源泉所得税の納付、いつまで?原則と“納期の特例”を一人法人向けに整理

役員報酬・給与・源泉・社保

一人法人(ひとり社長)で給与(役員報酬)を払い始めると、税金の中でいちばん早く・確実に襲ってくるのが源泉所得税です。決算や法人税は「年1回」ですが、源泉は毎月(または半年ごと)に納付の締切があり、うっかりすると延滞税・不納付加算税などのリスクが出ます。

しかも源泉所得税は、「払って終わり」ではなく、納付期限・納期の特例・年末調整・法定調書まで一本の線で繋がっています。ここがぐちゃぐちゃになると、一人法人は給与まわりで“詰む”

この記事では、源泉所得税の納付期限を最短で理解できる形に整理します。条文の細部より、事故らない運用がゴールです。

給与まわり全体(源泉・年末調整まで)を「最小構成」でまとめたい場合は、先にこちらを読むと迷いません。

給与・源泉・年末調整までできる?一人法人の“給与まわり”最小構成【2026】

源泉所得税の納付期限(原則)と納期の特例(半年)の全体像

結論:源泉の納付期限は「原則:翌月10日」。納期の特例なら「7/10・1/20」

源泉所得税(給与から天引きした税金)の納付期限は、まずこの2行で覚えればOKです。

  • 原則:給与を支払った月の翌月10日までに納付
  • 納期の特例:(要申請)半年分まとめて納付でき、期限は7/101/20

一人法人の実務はほぼこれで回ります。難しくなるのは「どの支払いが源泉の対象か」「納期の特例の“申請して終わり”事故」「年末の提出物」と繋がっている部分。この記事では、その詰みポイントだけを潰します。

まずここで混乱する:源泉所得税は「会社のお金」ではなく「預かった税金」

源泉所得税は、会社が払う税金(法人税等)とは性格が違います。給与を支払うときに、従業員(役員含む)の所得税を会社が天引きして預かり、国に納める仕組みです。

重要:源泉は「預り金」
会社の利益が出ていなくても、給与を支払った時点で預かった税金は発生し、期限までに納付する必要があります。

つまり、源泉で事故るのは「税金が高い」からではなく、期限管理・資金管理・処理の仕組みがないからです。

どれが対象?源泉が発生する支払いを「給与系」と「外注系」に分けて整理

源泉は給与だけの話に見えますが、実務では「外注費(報酬)」でも発生するケースがあり、ここで混乱します。まずは一人法人で遭遇しやすい範囲に絞って整理します。

源泉対象の支払い(給与系/外注系)の整理
区分 代表例 何が起きる?(機能) 詰みポイント(制約) 対象(よくいる一人法人) 最小の運用
給与系 役員報酬、従業員給与、賞与 支払時に源泉税を天引き→預り金が発生 支払日がズレると納付期限がズレる。月次が止まりやすい 役員報酬を支払っている 支払日を固定→翌月10日(or 特例)をカレンダー化
外注系(報酬) 原稿料、デザイン料、士業報酬など(対象となるもの) 報酬支払時に源泉が発生する場合がある 「外注費だから源泉なし」と思い込み事故る 外注が多い(制作/ライター/デザイナー等) 支払先ごとに「源泉対象か」を最初に判定→台帳にメモ

外注系の源泉は業種や契約形態で扱いが変わるため、迷ったら「源泉対象の可能性がある支払い」をリスト化し、最初だけ税理士にスポット確認するのが一人法人の安全策です(毎回悩むコストが消えます)。

納付期限(原則):いつの給与が、いつまで?を“カレンダーで固定”する

原則ルールは「支払った月の翌月10日」。ここで大事なのは、発生日は“支払日”だということです(締め日ではなく)。

支払月→翌月10日(原則)をカレンダーで固定する
給与の支払日 源泉の対象になる月 納付期限(原則) 詰みポイント 最小の対策
毎月25日払い 25日に支払った月 翌月10日 月末ではないので「翌月10日」が意外と早い 「毎月10日」を自動リマインド化
月末払い 月末に支払った月 翌月10日 翌月初旬に納付が来る。資金が薄いと事故る 納付資金を“預り金口座”に寄せる
翌月払い(例:当月分を翌月10日支払) 翌月に支払った月 さらにその翌月10日 頭が混乱しやすい(締め月ではなく支払月) 支払日ベースで台帳化し、納付期限も並べる

一人法人は「経理が本業じゃない」前提なので、ルールを覚えるより、カレンダーで固定するのが最強です。

納期の特例とは:少人数の会社が「半年まとめて」納付できる制度

納期の特例は、源泉所得税(主に給与等)を毎月ではなく半年分まとめて納付できる制度です。毎月10日のプレッシャーが消えるので、一人法人には相性が良いことが多いです。

ただし、ここで詰みがちなポイントが2つあります。

  • 申請して終わりだと思う(実際は運用が必要:対象範囲・集計・納付忘れ)
  • 期限が独特(半年ごとの締切:7/101/20
納期の特例(半年納付)のイメージ:1-6月→7/10、7-12月→1/20

納期の特例の申請〜運用〜期限を、事故らない形で具体手順に落とした記事は別に用意しています。納期の特例を使うなら、この記事とセットでどうぞ。

納期の特例のやり方|申請〜運用〜期限(7/10・1/20)まで事故らない【2026】

“詰むポイント”だけ:納期の特例を使う人のチェックリスト

納期の特例は便利ですが、半年に1回になる分、忘れるとダメージが大きいです。一人法人が詰まないためのチェックを置きます。

納期の特例を使う人のチェックリスト
  • 対象を決めたか:給与(役員報酬)だけ?外注報酬も含む?
  • 預り金を分けたか:源泉分を別口座/別ルールで“使わない”状態にしたか
  • 集計の型:半年分をどう集計するか(会計ソフト/給与ソフト/表)
  • 期限の固定:7/10 と 1/20 をカレンダー固定(前倒しリマインド)
  • 年末と連動:年末調整・法定調書のスケジュールと衝突しないか

源泉は「預り金」です。半年分まとめて納付するなら、半年分まとめて預り金が膨らみます。だから預り金の資金管理が命です。

運用テンプレ:源泉の事故をゼロにする「月次ルーティン」

源泉の納付期限を知っても、運用が回らないと結局事故ります。ここでは一人法人向けに、月次で回る最小テンプレを示します。納期の特例を使う人も、月次で“預り金”を固めるのがコツです。

源泉の月次ルーティン:支払→仕訳→預り金→納付(原則or特例)
タイミング やること(機能) 制約(放置すると詰む) 対象 最小のやり方
給与支払日当日 源泉額を確認し、給与明細/支払記録を残す 後で金額が追えなくなる 全員 給与ソフト/明細PDFを「給与フォルダ」へ保存
支払後〜月末 仕訳(役員報酬/預り金)を確定 月次が止まると、期限管理が壊れる 全員 自動連携で取り込み→未分類ゼロで締める
毎月5日 納付対象月と金額を確認(チェックポイント) 翌月10日が突然来る 原則納付の人 カレンダーに「源泉チェック」を固定
毎月10日 納付(原則) 遅れるとペナルティリスク 原則納付の人 ネットバンクの定型振込/リマインドで前倒し
7/10・1/20 納付(納期の特例) 半年分を忘れるとダメージ大 特例の人 1ヶ月前・2週間前・前日に三段リマインド

会計ソフト側の自動連携が弱いと、月次が止まり、源泉も巻き添えで事故ります。忙しい一人法人ほど「銀行・クレカ自動連携」は重要です。

銀行・クレカ自動連携が強い会計ソフトはどれ?一人法人向け比較【2026】

年末に繋がる:源泉の納付は「年末調整」「法定調書」「給与支払報告書」とセット

源泉の納付を“単発の期限”で見ていると、年末に詰みます。源泉の周辺は、年末〜1月に提出物が集中し、源泉の集計が土台になります。

源泉→年末調整→法定調書→給与支払報告書のつながり
  • 年末調整:役員でも必要?やるならチェックリストで事故防止
  • 法定調書:支払調書など、提出物と期限を整理しておく
  • 給与支払報告書:住民税(特別徴収)に繋がる。出す先で迷いがち

年末調整の手順が不安なら、こちらにチェックリストがあります。

年末調整:役員でも必要?一人法人がやることチェックリスト【2026】

法定調書(支払調書)の全体像と期限はこちら。

法定調書(支払調書)って何?一人法人の提出物と期限を整理【2026】

給与支払報告書(住民税の特別徴収)が怖い人は、出す先と流れを先に固定しておくとラクです。

給与支払報告書はどこに出す?住民税の“特別徴収”が怖い人向け整理【2026】

よくあるQ&A:一人法人が「ここで間違える」だけ集めました

Q1. 納付期限の起点は「締め日」?
いいえ。基本は支払日です。締め日で考えると、翌月10日の期限がズレて事故ります。

Q2. 納期の特例を使えば、毎月の管理はいらない?
いります。納付が半年に1回になる分、半年分の預り金が積み上がるので、月次で預り金を固める方が安全です(半年後にまとめて集計すると詰みます)。

Q3. 役員報酬を変えたら源泉も変わる?
変わります。源泉は給与額に連動するので、役員報酬の変更は源泉・社保・住民税まで波及します。役員報酬の決め方(変更の落とし穴)は別記事で整理しています。

役員報酬の決め方|変更できる?できない?“後で詰む”落とし穴回避【2026】

Q4. 源泉の納付を忘れたらどうなる?
ペナルティ(延滞税など)の可能性があります。ここで重要なのは、罰を怖がるより、二度と忘れない仕組みを作ること。原則納付なら「毎月10日」を、特例なら「7/10・1/20」を三段リマインドで固定してください。

実務メモ(よくある“つまずき”):
・「預り金が足りない」事故は、源泉を会社の運転資金と混ぜたときに起きます。源泉分は、給与を支払った瞬間に“使ってはいけないお金”として分離するのが安全です。
・ネットバンクのサブ口座や、会計ソフト内の補助科目で「源泉預り金」を見える化すると、半年後の納期の特例でも詰みにくくなります。
・源泉は給与以外にも発生し得るので、外注が多い会社は「支払先マスタ」に源泉対象/非対象のメモ欄を作っておくと、年末の支払調書まで一気に楽になります。

また、源泉の期限管理は「カレンダーに入れたのに忘れる」問題が起きがちです。おすすめは、①カレンダー(予定)+②タスク(チェック)+③前倒しルールの三重化です。

  • ①予定:毎月10日(原則)/7月10日・1月20日(特例)を固定予定として登録
  • ②チェック:毎月5日に「源泉チェック」タスク(未払がないか確認)を入れる
  • ③前倒し:期限当日にやらず、必ず2営業日前までに納付するルールにする

一人法人の給与まわりは、手作業が増えるほどミスが増えます。会計ソフトや給与ソフトを使う目的は「便利」ではなく、期限事故を減らすことです。導入時の初期設定で詰みがちなポイントは、チェックリストで潰せます。

会計ソフト導入の初期設定チェックリスト|一人法人が最初にやる10項目【2026】

まとめ:源泉は「翌月10日」か「7/10・1/20」。預り金として管理すれば詰まない

源泉所得税の納付期限は、原則は翌月10日、納期の特例なら7/10・1/20。一人法人が事故る原因は、知識不足より運用が回っていないことです。源泉を「預り金」として分け、支払日ベースで台帳化し、期限をカレンダー固定する。これだけで詰み確率は激減します。

次に読むなら、納期の特例を実務で事故らせない手順書へ(申請〜運用まで)。

納期の特例のやり方|申請〜運用〜期限(7/10・1/20)まで事故らない【2026】